『ワイルド・スピード EURO MISSION』は、死んだはずの恋人レティが生きているかもしれないという知らせから、ドミニクたちファミリーが再びハンドルを握る、シリーズ第6作です。この記事では、まずネタバレなしであらすじと見どころを紹介し、後半の「感想」からはストーリーの核心に触れるネタバレありの考察に切り替えます。未鑑賞の方は、ネタバレの手前まででも作品の雰囲気は十分つかめる構成にしていますので、安心して読み進めてください。
作品情報

| 邦題 | ワイルド・スピード EURO MISSION |
| 原題 | Furious 6 |
| 上映日 | 2013/7/6 |
| 作成国 | アメリカ |
| ジャンル | アクション/サスペンス |
| 上映時間 | 130分 |
あらすじ
ある日、逃亡生活中のドミニクの前にFBI特別捜査官のホブスが現れた。彼はドミニクにヨーロッパ圏で大暴れしている国際的犯罪組織を壊滅させるため、協力を要請する。さらにホブスは、組織に死んだはずのドミニクの恋人レティが関係していることを告げる。
ホブスが追っているのは、英国を拠点にする犯罪組織のボス・オーウェン・ショウ。軍事部品の強奪計画を進める組織を止めるには、カーチェイスのプロであるドミニクたちの力が必要だというのが依頼の建前ですが、ドミニクにとって本当の動機はただひとつ、レティが本当に生きているのかを自分の目で確かめることです。恩赦と引き換えにファミリーが再集結し、ヨーロッパ各地を舞台にした大規模なカーアクションへ突入していきます。シリーズ未見の方でも、この第6作から観始めて置いていかれることはほぼありません。人物紹介的な会話が随所にあり、「濃い絆で結ばれたファミリーが、法の外側で正義を実行する」という一点さえ押さえれば十分楽しめます。
キャスト
監督:ジャスティン・リン

ジャスティン・リンは『TOKYO DRIFT』からシリーズを手がけ続けてきた監督で、本作が続投4作目にあたります。ドリフトや狭い路地での接近戦を得意としてきたそれまでの作風から一歩踏み出し、本作では戦車や滑走路といった「巨大な舞台装置」を使ったスケールの大きいアクションに挑戦しているのが特徴です。
脚本:クリス・モーガン
音楽:ルーカス・ビダル
出演者
出演者情報は「俳優(役名)」の順番で記載しています。
ヴィン・ディーゼル(ドミニク・トレット)

ポール・ウォーカー(ブライアン・オコナー)

ドウェイン・ジョンソン(ルーク・ホブス)
前作からファミリーを追う側だったホブスですが、本作ではドミニクたちを勧誘する側に回ります。圧倒的な体格と押しの強さで、シリーズに「敵か味方かはっきりしない緊張感」を持ち込んだキャラクターです。
ミシェル・ロドリゲス(レティ・オルティス)
前作『MEGA MAX』で死亡したはずのレティが、記憶を失った状態でショウの組織側の人間として再登場します。本作の物語を動かす最大の軸となる人物です。
ジョーダナ・ブリュースター(ミア・トレット)
ドミニクの妹であり、ブライアンの妻でもあるミア。今作では母となり、直接カーチェイスの最前線に出る場面は減りますが、ファミリーの「帰る場所」を象徴する存在として物語を支えます。
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感想
⚠️ ここからネタバレを含みます。未鑑賞の方はご注意ください。
私がこの作品でいちばん評価しているのは、レティというキャラクターの扱い方です。前作で死亡したはずのレティが、記憶喪失という形で敵側の組織にいたという設定は、ともすればご都合主義に映りかねない設定だと思います。それでも本作が単なる「実は生きていました」で終わらせずに成立しているのは、記憶を失ったレティがドミニクを見ても心を動かされず、それでも体だけは彼女の中に染み付いたハンドルさばきを覚えているという描き方をしているからです。頭では思い出せないのに、体は闘い方を、走り方を忘れていない。この「頭と体のズレ」が、本作のカーアクションに単なる爽快感以上の切なさを乗せていると感じました。
アクション面でのハイライトは、なんといっても滑走路での戦車戦と、その後の巨大輸送機を使ったクライマックスです。ジャスティン・リン監督は本作まで、狭い路地でのドリフトなど「小さい空間での接近戦」を得意にしてきた監督だと私は捉えているのですが、今回はその路線から一気にスケールアップし、戦車という規格外の質量をカーチェイスに持ち込みました。荒唐無稽であることは百も承知の上で、それでも画面いっぱいに広がる滑走路と、そこを埋め尽くす車の群れを見せられると、細かい理屈は抜きにして「ここまでやるか」という高揚感に押し切られてしまいます。オチや整合性よりも「観ている間の熱量」で殴ってくる作品だと思えば、この荒唐無稽さはむしろ本作の持ち味です。
もうひとつ触れておきたいのが、ジゼルというキャラクターの結末です。ジゼル(ガル・ガドット)は本作のクライマックスで命を落とします。ハンとの関係を築いてきた彼女がここで退場するという展開は、シリーズを追いかけてきた観客に「積み重ねてきた人間関係の重み」を痛感させるものでした。派手なアクション映画でありながら、こうした仲間の死をごまかさずに描き切るバランス感覚が、本作をただのカーアクション映画で終わらせていない理由だと感じます。
そして最後に触れないわけにいかないのが、エンドクレジット後に挿入される衝撃の映像です。これまでの物語とは無関係に見えるシーンから、ジェイソン・ステイサム演じる人物が登場し、次作への不穏な伏線が張られます。本編のカタルシスに水を差すというより、「次も観るしかない」と思わせる強烈な引きで、シリーズ全体を俯瞰したときの本作の立ち位置――ファミリーの再結成編を締めくくりつつ、次章への扉を開く回――を象徴するラストだったと思います。
音楽
本作の音楽を手がけたのはルーカス・ビダルです。シリーズを支えてきた重低音のビートに、疾走感を煽るストリングスを重ねる作りは本作でも踏襲されていて、カーチェイスのスピード感と劇伴のテンポが噛み合っているように聴こえました。特に戦車が滑走路を追ってくる場面は、エンジン音や金属の擦れる音といった環境音の中に劇伴がうまく入り込んでいて、絵の大きさに負けない緊張感を感じます。
一方で、シリーズを重ねるごとにアクションの規模がどんどん大きくなっていく中で、劇伴も「とにかく盛り上げる」方向に寄っている印象は否めません。静かな会話シーンでも情感を煽る音楽が鳴りがちで、映像に語らせる余白が少なくなっているように感じるのは、シリーズ全体として今後向き合っていく課題かもしれません。とはいえ、レティとドミニクの再会シーンでは音を絞って感情を見せる作りになっており、緩急のつけ方自体は本作でも意識されていると私は受け取りました。
まとめ
『ワイルド・スピード EURO MISSION』は、レティの記憶喪失という重いテーマを軸に据えながら、戦車戦や輸送機でのクライマックスといった規格外のアクションで押し切ってくる一作です。ストーリーの整合性を突き詰めれば粗はありますが、それを補って余りある熱量と、ファミリーというシリーズの核をぶらさずに次作への引きまで用意した構成力を評価して、私はこの作品を5点中4点としました。多少の荒唐無稽さを楽しめるかどうかが、そのまま評価の分かれ目になる映画だと思います。まだ観ていない方は、エンドクレジットまで席を立たずに観ることをおすすめします。