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3つ巴の追跡劇でたしかにスリル感はある映画でした。ただ、奥が深いんだろうなーという感覚はあるのですが、何が深いのかを理解できていないので、現時点では3点としています。
今後、2回目を観たとき、またはそれ以上の回数観たときに、この映画本来の良さを感じることになるのかもしれません。
改めて基本情報を整理すると、本作はジョエル&イーサン・コーエン監督が手がけたクライムスリラーで、原作はコーマック・マッカーシーの同名小説(2005年)。アメリカでは2007年11月21日、日本では2008年3月15日に公開された上映時間122分の作品です。舞台は1980年のテキサス。ギャングの銃撃戦跡から200万ドルを持ち去った元溶接工のモスを、殺し屋アントン・シガーが執拗に追う姿を描いています。この記事ではまずネタバレなしの感想からお届けし、「ここからネタバレを含みます」という一文のあとにネタバレありの考察に入ります。
作品情報

| 邦題 | ノーカントリー |
| 原題 | No Country for Old Men |
| 上映日 | 2008/03/15 |
| 作成国 | アメリカ |
| ジャンル | ドラマ、クライム、スリラー |
| 上映時間 | 122分 |
| 評価 | 5点中3点 |
あらすじ
荒野で狩をしていたベトナム帰還兵のモスは、偶然ギャングたちの死体と麻薬絡みの大金200万ドルを発見。 その金を奪ったモスは逃走するが、ギャングに雇われた殺し屋シガーは、邪魔者を次々と殺しながら執拗に彼の行方を追う。事件の発覚後、保安官のベルは二人の行方を探るが、彼らの運命は予測もしない衝撃の結末を迎え・・・。
filmarksより引用
キャスト
監督:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
脚本: ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
原作:コーマック・マッカーシー
監督と脚本はコーエンという兄弟です。
この兄弟は漫画のような表情を撮るのが得意らしいです。
コーエン兄弟は『ファーゴ』のような乾いた笑いと不穏な暴力描写を持ち味とする作家で、本作でも派手な銃撃戦よりも静かな緊張感で観客を引き込む作風は健在です。
出演者
出演者情報は「俳優(役名)」の順番で記載しています。
トミー・リー・ジョーンズ(エド・トム・ベル保安官)
老いや時代の変化についていけない苦悩を、静かな佇まいで背負う保安官ベルを演じています。渋みのある存在感で知られる俳優で、下記に挙げる出演作でもクールな貫禄を発揮しています。
トミー・リー・ジョーンズが出演している他の映画
- ジェイソン・ボーン
- メカニック
- メン・イン・ブラック3
ハビエル・バルデム(アントン・シガー)
本作でアカデミー助演男優賞を受賞したハビエル・バルデムが演じるのは、コインの表裏で相手の生死を決めるという独自のルールを持つ殺し屋アントン・シガー。表情の起伏を極力抑えた芝居と、独特な髪型・佇まいが静かな恐怖を生み出しています。
ハビエル・バルデムが出演している他の映画
- 007 スカイフォール
- DUNE/デューン 砂の惑星
- パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊
ジョシュ・ブローリン(ルウェリン・モス)
大金を持ち去ったことで殺し屋に追われることになる元溶接工モスを演じるジョシュ・ブローリン。屈強な体格を活かした逃走劇に説得力があり、追われる側の緊迫感をしっかり体現しています。
ジョシュ・ブローリンが出演している他の映画
- DUNE/デューン 砂の惑星
- アベンジャーズ/エンドゲーム
- デッドプール2
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ネタバレなし感想
全体の雰囲気・テイスト
本作を貫いているのは、テキサスの乾いた荒野を舞台にした、息をひそめるような緊張感です。観ている最中は気づきにくいのですが、後から振り返ってみると劇伴(BGM)がほとんど使われておらず、風の音や足音、扉のきしみといった環境音だけで場面が構成されています。派手な音楽で盛り上げるのではなく、静けさそのもので「後ろから誰か来るのではないか」という不安を観客に体感させる作りは、3つ巴の追跡劇というシンプルな構造をより研ぎ澄まされたものにしていて、地味に凄い映画だったのかもしれないと後になって気づかされます。
見どころ・おすすめポイント
最大の見どころは、ハビエル・バルデムが演じる殺し屋アントン・シガーの存在感です。初登場シーンから「絶対に堅気ではない」とわかる不穏な空気をまとっていて、無理に作られたような笑顔と、特徴的な形のあごとのギャップが逆に不気味さを引き立てています。台詞で悪役性を説明するのではなく、佇まいと表情だけで恐怖を伝えてくる演技は必見です。
■ ここがポイント
シガーは銃ではなく、家畜処理に使う空気式の器具(ボルトガン)を凶器に選ぶ殺し屋です。武器の選び方ひとつで、この映画の不穏な空気が決定づけられています。
シガーは銃器ではなく、本来は家畜を処理するための空気式の器具を凶器として使います。人を殺す道具としては異質なこの選択が、彼の得体の知れなさと、感情を挟まない機械的な冷たさを象徴していて、わかりやすい悪役の記号に頼らない殺し屋像を作り上げています。
こんな人におすすめ/おすすめしない人
アカデミー作品賞を受賞した重厚な人間ドラマや、じわじわと追い詰められていくサスペンスの緊張感を味わいたい人には強くおすすめできます。一方で、勧善懲悪のはっきりした結末や、スカッとするカタルシスを求めている人には、正直なところ物足りなさが残るかもしれません。その理由は、この先のネタバレパートで詳しくお話しします。
評価
評価は5点満点中3点としました。3つ巴の追跡劇としてのスリル感、そしてシガーという殺し屋の造形は文句なしに引き込まれます。ただし、観賞後に残る満足感という点では素直に楽しみきれなかった部分があり、その理由はネタバレパートで正直にお伝えします。
ネタバレあり感想
⚠ 注意
ここからネタバレを含みます。未鑑賞の方はご注意ください。
印象的だったシーン
もっとも印象に残っているのは、モスの最期の描かれ方です。それまで200万ドルを巡ってシガーと死闘を繰り広げてきたはずなのに、モスの死は画面の外で、しかもシガーとは無関係の第三者によってあっけなく処理されてしまいます。追跡劇のクライマックスとして直接対決を見せるのではなく、あえてそれを描かないという選択に、最初に観たときは正直なところ拍子抜けしてしまいました。
キャラクターについて
シガーはコインを投げさせ、その裏表で相手を生かすか殺すかを決めるという奇妙なルールを持つ殺し屋です。自分の意志ではなく運に生死を委ねさせるこの儀式めいたやり取りは、彼が単なる冷酷な殺し屋ではなく、独自の哲学を持つ存在であることを物語っています。一方、保安官ベルは事件を通じて自分の理解が及ばない「新しい時代の悪」に直面し、老いと無力感を深めていきます。ラストシーンでベルが妻に語る、亡くなった父親についての穏やかな夢の話は、暴力の連鎖を追いかけてきた男が最終的にたどり着く諦観のようなものを感じさせますが、正直に言うと、初見では何を締めくくろうとしているのか掴みきれませんでした。
良かった点・気になった点
良かった点は、やはりシガーというキャラクターの不気味さです。コイントスとボルトガンという2つの記号だけで、史上屈指の殺し屋像を作り上げた脚本と演技には素直に脱帽します。気になった点は、モスの死のあっけなさと、ベル保安官の夢の話で終わるラストの分かりにくさです。物語をきっちり畳んでカタルシスを与えるタイプの映画ではなく、あえて宙ぶらりんの読後感を残す作りなので、爽快な決着を期待していると肩透かしを食らいます。
総評・一言まとめ
総評として、『ノーカントリー』は第80回アカデミー賞で作品賞・監督賞・助演男優賞・脚色賞の4部門を受賞した、紛れもない傑作なのだと思います。ただ、個人的な満足度としては、シガーの不気味さに引き込まれた分だけ、カタルシスを拒む結末に置いていかれたような感覚が残りました。奥が深いんだろうという予感はありつつも、その深さをまだ掴みきれていない、というのが今の正直な感想です。評価は5点満点中3点のままとします。
音楽
まとめ
『ノーカントリー』は、シガーという史上屈指の不気味な殺し屋を生み出した一方で、わかりやすいカタルシスをあえて拒む結末を持つ作品です。1回観ただけでは消化しきれない奥深さがありそうな一本なので、気になった方はぜひ本編を確認したうえで、このネタバレパートを読み返してみてください。
この記事のまとめ
- ✓ ジョエル&イーサン・コーエン監督、原作はコーマック・マッカーシーの同名小説
- ✓ ハビエル・バルデム演じるアントン・シガーの、コイントスとボルトガンによる不気味な殺し屋像が最大の見どころ
- ✓ 評価は5点満点中3点。アカデミー作品賞受賞の傑作である一方、カタルシスを拒む結末は好みが分かれる