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「記憶」という誰もが逃れられないテーマに、ここまで真正面から溺れていく映画も珍しいと思います。2021年公開のSF映画『レミニセンス』は、リサ・ジョイ監督がヒュー・ジャックマン主演で手がけたノワール風のミステリーです。この記事では、レミニセンスの映画感想をネタバレなしパートとネタバレありパートの2部構成でお届けします。ネタバレありパートの開始位置は本文中に明記しているので、未鑑賞の方も安心して読み進めてください。
作品概要

あらすじ
近未来、海面上昇によって半分近くが水に沈んだマイアミ。記憶を追体験させる装置を扱う探偵ニック・バニスターは、忽然と姿を消した恋人メイの行方を追ううちに、都市に渦巻く陰謀と、自らも抜け出せなくなっていく記憶への執着に巻き込まれていく。
キャスト・スタッフ
監督・脚本はリサ・ジョイ。ドラマ『ウエストワールド』の共同制作者としても知られ、記憶や人間の意識を扱うテーマの一貫性は本作にも色濃く出ています。主演はヒュー・ジャックマン(ニック・バニスター役)、共演にレベッカ・ファーガソン(メイ役)、タンディ・ニュートン(ワッツ役)。製作にはクリストファー・ノーランとエマ・トーマス夫妻も名を連ねています。上映時間は116分。
ネタバレなし感想

全体の雰囲気・テイスト
物語の舞台は、温暖化で海面が上昇し、街の大部分が水に沈んだ近未来のマイアミ。日中の暑さを避けて人々は夜に働き、水没した通りを渡って暮らす──そんな終末感と気だるさが同居する空気が全編を包みます。とくに印象的なのが色味の対比です。記憶を追体験するタンク(装置)の内側は琥珀色の温かい光に満たされる一方、水没した現実の街は青くくすんだトーンで統一されています。撮影・照明で場面ごとの色調を調整する演出(カラーグレーディング)だけで、「過去の甘さ」と「現在の重さ」が視覚的に伝わってくる設計は、見ているだけで引き込まれました。
見どころ・おすすめポイント
見どころは、記憶の中に「潜っていく」捜査パートの編集リズムです。現在のニックの独白と、水槽に浮かぶ依頼者の回想映像が、2つの場面を交互に繋ぐ編集技法(クロスカッティング)でテンポよく切り替わり、観客も一緒に記憶の迷路へ入り込んでいくような没入感があります。現在と過去が編集の速度そのものでつながっていく感覚は、この映画ならではの体験です。
■ ここがポイント
本作の製作にはクリストファー・ノーランとエマ・トーマス夫妻が名を連ねており、監督のリサ・ジョイもノーランの実弟ジョナサン・ノーランと共に『ウエストワールド』を手がけた作り手です。記憶や時間というテーマの系譜を知っておくと、本作の見え方がぐっと深くなります。
こんな人におすすめ/おすすめしない人
ヒュー・ジャックマンのハードボイルドな一面や、レベッカ・ファーガソンの妖艶な存在感を観たい人、記憶や時間をテーマにしたSFが好きな人には強くおすすめできます。同じく記憶をテーマにしたノーラン作品メメントが刺さった方は間違いなく相性が良いはずです。一方で、テンポの速いアクションを期待すると、中盤の捜査パートはやや静かでじっくり進むため、拍子抜けする可能性があります。
評価
総合評価は5点満点中4点。派手さより雰囲気と余韻で魅せるタイプの作品で、友人にも自信を持って薦められる完成度だと感じました。インソムニアのような、じっくり系のノワール映画が好きな人ならなおさら刺さると思います。
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ネタバレあり感想

⚠️ ここからネタバレを含みます。未鑑賞の方はご注意ください。
印象的だったシーン
最も印象に残ったのは、ニックが他人の記憶を借りてメイの足取りを辿っていく終盤の畳みかけです。彼自身の幸せな回想と、メイが隠していた過去の断片が交互に映し出される構成は、「愛していた相手が実は自分の知らない顔を持っていた」という衝撃を、編集の速度そのもので体感させる仕掛けになっていました。作中で繰り返し映るオレンジ畑の記憶は、失われた楽園のような役割を担っていて、水没した街の閉塞感との対比が効いています。
キャラクターについて
ニックは、他人の記憶に寄り添う仕事をしながら、自分自身は過去に囚われていく皮肉な人物として描かれます。相棒のワッツは、戦争帰りの元軍人としてニックを支え続けながらも、彼への想いを表に出さない抑えた芝居がかえって胸に刺さりました。メイは、水没した街の片隅で歌う歌姫でありながら、生き延びるために別の顔を使い分けていた人物で、その二面性が終盤で明かされたとき、序盤の何気ない台詞や仕草の意味が一気に反転します。
良かった点・気になった点
良かった点は、記憶に依存していくニックの姿を、単なる純愛物語で終わらせず「過去に閉じこもることの危うさ」というテーマにまで踏み込んでいたことです。一方で気になった点として、汚職や利権を巡る中盤の展開はやや説明的で、謎解きそのものは王道の域を出ません。ミステリーの意外性よりも、感情の積み重ねで見せるタイプの映画だと思って観ると、肩透かしを感じずに済むはずです。
総評・一言まとめ
『レミニセンス』は、派手などんでん返しで魅せる映画ではなく、記憶という個人的なテーマにとことん付き合ってくれる映画です。観終えたあとしばらく、自分自身の大切な記憶について考えてしまうような読後感が残りました。
まとめ

『レミニセンス』は、SFやノワールが好きな人はもちろん、記憶や過去との向き合い方について考えたい人にこそ観てほしい一作です。ヒュー・ジャックマンの静かな熱演と、色彩で語る映像美を、ぜひ大きな画面で味わってみてください。
この記事のまとめ
- ✓ 記憶をテーマにしたSFノワールで、雰囲気と余韻を楽しむタイプの作品
- ✓ 評価は5点満点中4点。物語の起伏より映像・編集・感情の積み重ねで魅せる
- ✓ 記憶や時間をテーマにした作品が好きな人、静かな没入感を求める人におすすめ