やっぱりぴーちくぱーちく喋るおじさんより寡黙なほうがかっこいいよな。
心地の良いルーティーンを真似しよっと。
まずこの映画を観て思ったことは、将来の自分を観ているような親近感があったこと。
自分に似ているけれども違うところから、良いところを取り入れておれも完璧な日々を送りたい。
綺麗なタワマンなんかより、今にも崩れそうなボロいアパートの畳で布団を敷き、間接照明の灯りの中、一人でゆっくり読書する、そんな習慣がとても素敵。
とりあえず部屋掃除しよ。 ※足の踏み場もない状態。2024/08/25時点。
この記事では、まず観る前でも安心して読めるネタバレなしの感想を書いたあと、境界線をはさんでからネタバレありの感想・考察をがっつり書いていく。星5点中4点をつけた理由も、ネタバレありパートの最後にまとめている。
今回の映画

| 映画名(日本語) | PERFECT DAYS |
| 映画名(英語) | Perfect Days |
| 上映時間 | 124分 |
| ジャンル | ドラマ |
| 上映日 | 2023/12/22 |
| 作成国 | 日本 |
| 点数 | 4点/5点中 |
あらすじ
東京・渋谷でトイレ清掃員として働く平山(役所広司)は、静かに淡々とした日々を生きていた。
filmarksより引用
同じ時間に目覚め、同じように支度し、同じように働いた。
その毎日は同じことの繰り返しに見えるかもしれないが、同じ日は1日としてなく、男は毎日を新しい日として生きていた。
その生き方は美しくすらあった。
男は木々を愛していた。
木々がつくる木漏れ日に目を細めた。
そんな男の日々に思いがけない出来事がおきる。
それが男の過去を小さく揺らした。
ネタバレなし感想
全体の雰囲気・テイスト
『PERFECT DAYS』は2023年公開、ヴィム・ヴェンダース監督、上映時間124分の作品。派手な事件はほとんど起きない。渋谷でトイレ清掃の仕事をする平山(役所広司)が、起きて、働いて、銭湯に入って、古本屋で文庫を買って眠る、という一日をほぼそのまま繰り返し映していく構成になっている。それだけ聞くと退屈そうに思うかもしれないが、観ているうちに「同じに見える毎日にも、今日にしかない光がある」という感覚がじわじわ効いてくる。木々の葉のあいだから差し込む光、いわゆる木漏れ日を平山が見上げる表情が繰り返し挟まれることで、ルーティーンそのものが静かな豊かさとして立ち上がってくるのが、この映画の一番の空気感だと思う。
見どころ・おすすめポイント
まず見てほしいのは役所広司の芝居。この映画はセリフが極端に少なく、平山が何を考えているかはほとんど説明されない。それでも表情や仕草だけで感情の輪郭が伝わってくるのは、演技の情報量がとにかく多いからだと思う。
もう一つの見どころは音楽。平山は運転中にカセットテープで昔の洋楽をかけるのだが、この選曲がいちいち渋い。セリフではなく選曲で人物の内面を語らせる作りになっていて、洋楽好きなら別の角度からも楽しめる仕掛けになっている。
こんな人におすすめ/おすすめしない人
会話やテンポの速い展開を求める人には正直しんどいと思う。派手な起伏はほぼゼロで、2時間近く「同じような一日」を繰り返し見せられる構成だからだ。逆に、日々のルーティーンや小さな習慣に美しさを感じるタイプの人、静かな映画館の空気そのものを味わいたい人には強くおすすめできる。
評価
星5点中4点。理由はこのあとのネタバレありパートでまとめて書くが、結論だけ先に言うと「繰り返しの中にある微差」「役所広司の演技」「カセットテープの選曲」の3つがそろって効いている作品だった。
ネタバレあり感想
⚠️ ここからネタバレを含みます。未鑑賞の方はご注意ください。

最後の役所広司の車を運転している表情の長回しは見入ってしまった
2時間近く役所広司が演じる平山というおじさんの生活を覗き見してきたわけだが、この映画ではセリフが少なくて、人間の関係性や、日々の生活から平山がどんな感情なのか、どんなことを考えているのかをこちら側に委ねている点が良い。
そのうえで、最後に平山の表情だけを音楽にあわせて長く写しているシーンでは、表情から読み取れという制作側の意図もわかりつつ、まんまとはめられてしまった。
私が感じ取ったのは以下のようなものだった。ただ、テキストに起こしてしまうと非常にチープに感じてしまう。なので、セリフではなく、表情で読み取らせたのは映画ならではの良さであった。また、正解もないため答えはいくらでもある点もこちらの想像力を掻き立たせる。
- 孤独
- この年までパートナーがいないこと
- 一人で生きると決めた覚悟
- 姪っ子と触れ合いことにより、自分の子供がいたときの想像
- 妹とは別の世界に住んでいること
- 親との関係性 ※おそらく関係性が悪く、施設に入っていても会いに行かない関係性
- 一方で、姪っ子は家出するときに、自分のところに来てくれた嬉しさ
- スナックのママの元旦那がガンになっていること
キャラクターについて
平山というキャラクターは、セリフでは語られない分、周りの人物との距離感で輪郭が見えてくる作りになっている。家出してきて転がり込んできた姪っ子に対しては、どこかぎこちないながらも嬉しそうにしているのが伝わってきて、この人にもちゃんと家族への愛情があるんだとわかる。一方で妹とは、住んでいる世界がまるで違う、という距離の取り方をしていて、家族の中でも触れられていない過去があることがにじみ出ている。行きつけのスナックのママの元旦那の話も、平山の穏やかな日常に「時間は有限だ」という影をそっと差し込む役割になっていたと思う。
良かった点
この映画の一番の強さは、「同じ毎日」に見える繰り返しの中にちゃんと微差があり、その微差にこそ豊かさが宿っているという描き方そのものだと思う。木漏れ日を見上げる表情、銭湯での湯加減、行きつけの店でのやり取り。毎日ほぼ同じことをしているはずなのに、一日ごとに違う空気が流れている。ここに説得力を持たせているのが役所広司の演技で、台詞がほとんどない中で内面の揺れを表情だけで見せてくる力量はさすが2023年カンヌ国際映画祭男優賞。
あと単純に、平山がカセットテープでかけている洋楽の選曲が渋くて良い。ザ・アニマルズ、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、オーティス・レディング、ルー・リード、パティ・スミス、ローリング・ストーンズ、ヴァン・モリソン、キンクス、ニーナ・シモンあたりが車内に流れるたび、このおじさんの若い頃を勝手に想像してしまう。セリフで語らない過去を、選曲というかたちで匂わせてくる構成は地味に効いていた。
リアルな日常だからこそ再現度高くしてほしく、気になる点がいくつかあった
妹とは違う正解に住んでいる、トイレの清掃員をしていることを妹から軽蔑の目でみられる、これらは一般的な世間の目を表していて、誰か決めたか知らんけど相対的に、社会では下とされるおじさんの生活。
良し悪しではなく、私はこっちの生活のほうが好きなのだが、好きだからこそリアルに欠ける点が気になる。もっとリアリティがほしかった。
- 服が綺麗すぎる。ユニクロが提供していたから新品の服を着ていたが、こういう人種は物持ちがよく、日焼けしきったぼろぼろのTシャツや帽子などを被る。靴も綺麗すぎる。
- 家の前にある自販機の中身が空っぽな音がする。
- トイレ掃除している手袋のまま、ウォシュレットのボタンを押すな。汚い。
- 都内の移動で高速のる?トイレ掃除の渋谷への移動だけで高速代経費で落ちる?
- ボロい家だったけど、2階建で、押上の下町でだいぶ都内でけっこう家賃高いよな?
音楽がおじさんにしちゃオシャレすぎないか
今回の監督は日本のことをよく知っているドイツ人の監督、ヴィム・ヴェンダース。
車で流す音楽も基本洋楽で、ザ・アニマルズやヴェルヴェット・アンダーグラウンドなど60〜70年代のロック・ソウルが中心。
洋楽好きなおじさんもいるけど、ちーとオシャレな選曲や過ぎないか。ただ改めて考えると、日本を知り尽くしたドイツ人監督だからこそ選べる、外からの視点で渋いところを突いてくるセレクトなんだろうなと今は思っている。
総評・一言まとめ
結論として、星4点は妥当だと思う。物語の起伏や説明的なセリフを削ぎ落として、「同じに見える毎日」の中にある微差だけで2時間近く見せきる胆力、それを支える役所広司のほぼ無言の演技、そして平山という人物の内面を雄弁に語るカセットの選曲。この3つが噛み合っている作品だった。気になる点として挙げたリアリティのズレはあるものの、それを差し引いても「自分の日々にも、こういう完璧な一日がある」と思わせてくれる力のある映画だったので、4点は下げようがない。
キャスト

監督・脚本:ヴィム・ヴェンダース
出演者情報は「俳優(役名)」の順番で記載しています。
役所広司(平山)
邦画は、日本人の演技が大根すぎて見てられないんだけど、役所広司は上手くて安心できる。
そして、演技で感動できて素晴らしい。本作の演技は2023年のカンヌ国際映画祭男優賞、さらに第47回日本アカデミー賞の最優秀主演男優賞も受賞している。
俳優が出演している他の映画
- 孤狼の血
- 渇き
- すばらしき世界
女優(役名)
音楽

まとめ

この映画は、幸せってなんだろう、とかそんな安直なことを言いたいんじゃないと思う。
毎日同じような生活をしていてもその中に完璧な日ってある。自分の物差しの中で。
でも人間は社会的な人間だから、人との関わりは切れない。バイトのやつでも次から次へとでてくるし、身内だと切ったっと思っても思いがけないことからつながったりする。
いいこともあるし、辛いこともあるけど、とりあえず自分に芯持ってかっこよく生きていこうぜっていうメッセージを感じた。
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