スタジオジブリの作品には、宮崎駿監督の壮大な冒険や自然への畏怖、高畑勲監督の生活感あふれるリアリズム、そして米林宏昌監督や宮崎吾朗監督が受け継いだ新しい世代の作家性まで、実に幅広い魅力が詰まっています。ここでは公開順に全作品を振り返りながら、それぞれの監督とみどころを私なりに解説していきます。
風の谷のナウシカ(1984年)
※ジブリ設立前だが、制作スタッフの多くがジブリに関与。
監督は宮崎駿さんです。汚染された大地で人と自然の共生を模索する物語で、後のジブリ作品に通底する環境というテーマの原点になった一本だと思います。荒廃した世界観と気高いヒロインの造形は、公開から40年以上経った今見ても色あせません。
天空の城ラピュタ(1986年)
監督は宮崎駿さんです。空中都市を巡る王道の冒険活劇で、少年少女の成長物語とロボット兵の郷愁を誘う存在感が印象的です。飛行石が輝くクライマックスは、ジブリ作品の中でも屈指の名場面だと個人的に感じています。
となりのトトロ(1988年)
監督は宮崎駿さんです。田舎に引っ越してきた姉妹と森の主トトロとの交流を描いた作品で、ジブリの中でも特に子ども目線の温かさが際立ちます。何気ない日常の一コマ一コマに、宮崎さんらしい自然への愛情がにじみ出ています。
火垂るの墓(1988年)
監督は高畑勲さんです。「となりのトトロ」と同時上映されたことでも知られる戦争を題材にした作品で、幼い兄妹の悲劇を淡々とした筆致で描き切っています。派手さのないリアリズムこそが、高畑作品の真骨頂だと私は捉えています。
魔女の宅急便(1989年)
監督は宮崎駿さんです。13歳の魔女キキが見知らぬ町で自立していく姿を描いた作品で、思春期特有の自信喪失と再生の過程が丁寧に描かれています。空を飛ぶ爽快感と、等身大の悩みが同居しているところが魅力です。
おもひでぽろぽろ(1991年)
監督は高畑勲さんです。27歳のOLが小学生時代の記憶を振り返るという構成で、当時としては異色の大人向けアニメーションでした。紅花農家の暮らしぶりを丁寧に描いた、実写のような質感も見どころです。
紅の豚(1992年)
監督は宮崎駿さんです。豚の姿になった元エースパイロットが空賊相手に賞金稼ぎを続ける物語で、宮崎さん自身の飛行機愛が随所に感じられます。ダンディズムと哀愁が同居する、大人向けの一本です。
海がきこえる(1993年)
※テレビ映画。
監督は望月智充さんです。ジブリ初のテレビスペシャルとして、当時の若手スタッフに制作を任せた挑戦的な作品です。高知を舞台にした高校生の三角関係を、劇場作品とはまた違う瑞々しいタッチで描いています。
平成狸合戦ぽんぽこ(1994年)
監督は高畑勲さんです。多摩ニュータウンの開発に立ち向かうたぬきたちの奮闘を、化け学や社会風刺を交えて描いた作品です。ユーモラスな場面の裏にある、開発と自然破壊への問いかけが重く響きます。
耳をすませば(1995年)
監督は近藤喜文さんです。宮崎駿さんが企画・脚本・絵コンテを手がけつつ、当時作画監督として名高かった近藤さんに監督を託した作品です。読書好きの少女雫が、将来の夢と初恋に揺れる姿がみずみずしく描かれています。
もののけ姫(1997年)
監督は宮崎駿さんです。人と自然、そして神々の対立を壮大なスケールで描いた作品で、当時の日本映画の興行収入記録を塗り替えました。単純な善悪では割り切れない登場人物たちの造形が、見応え十分です。
ホーホケキョ となりの山田くん(1999年)
監督は高畑勲さんです。新聞の四コマ漫画が原作で、水彩画のような柔らかい絵柄を全編デジタル制作で実現した野心作です。ごく普通の一家の日常をスケッチ風に切り取るユーモラスな構成が、独特の味わいを生んでいます。
千と千尋の神隠し(2001年)
監督は宮崎駿さんです。不思議な湯屋を舞台に少女千尋が成長していく物語で、国内外で数々の賞を獲得したジブリの代表作です。名前を奪われるという設定に、自分を見失わないことの大切さが込められています。
猫の恩返し(2002年)
監督は森田宏幸さんです。「耳をすませば」のスピンオフ的な位置づけの作品で、猫を助けたことがきっかけで猫の国に迷い込む主人公ハルの冒険を描いています。テンポの良さと軽やかな作風が持ち味です。
ハウルの動く城(2004年)
監督は宮崎駿さんです。魔法で老婆にされた少女ソフィーと、動く城に住む魔法使いハウルとの出会いを描いた作品です。戦争という重いテーマを扱いながらも、恋愛ファンタジーとしての華やかさを両立させています。
ゲド戦記(2006年)
監督は宮崎吾朗さんです。宮崎駿さんの長男が初めて手がけた劇場作品で、アーシュラ・K・ル=グウィンの原作小説を基にした重厚なファンタジーです。父とは違う持ち味を模索した挑戦作として、賛否も含めて語られることが多い一本です。
崖の上のポニョ(2008年)
監督は宮崎駿さんです。人間になりたい魚の子ポニョと、少年宗介の友情を描いた作品で、手描きの温かみを前面に出した作画に力が注がれています。津波を思わせる波の表現など、宮崎さんの自然観がストレートに出た一本です。
借りぐらしのアリエッティ(2010年)
監督は米林宏昌さんです。この作品でジブリ初の監督デビューを飾りました。床下に暮らす小人の少女アリエッティと病弱な少年翔の交流を、繊細な生活描写で丁寧に描いています。米林さんらしい細部へのこだわりが光ります。
コクリコ坂から(2011年)
監督は宮崎吾朗さんです。1960年代の横浜を舞台に、高校生たちが古い部室棟の存続を目指して奔走する青春群像劇です。父・宮崎駿さんが企画・脚本に加わったこともあり、前作「ゲド戦記」より柔らかな作風に仕上がっています。
風立ちぬ(2013年)
監督は宮崎駿さんです。零戦の設計者・堀越二郎をモデルに、夢を追い続けた技術者の生涯を描いた作品です。宮崎さん自身の飛行機への情熱と、戦争の時代を生きた人々への複雑な思いが交錯する、集大成的な一本だと感じています。
かぐや姫の物語(2013年)
監督は高畑勲さんです。竹取物語を基に、水墨画のような筆致のアニメーションで描いた遺作的な作品です。制作に8年を費やしたことでも知られ、かぐや姫の心の叫びを描く終盤は何度見ても胸に迫ります。
思い出のマーニー(2014年)
監督は米林宏昌さんです。心を閉ざした少女杏奈が、湿地の館に住む少女マーニーと出会い、少しずつ心を開いていく物語です。ミステリー要素を絡めながら、孤独や自己肯定感というテーマに真正面から向き合っています。
アーヤと魔女(2020年)
※スタジオジブリ初の3DCG映画。
監督は宮崎吾朗さんです。ダイアナ・ウィン・ジョーンズの原作を基にした作品で、孤児院育ちの少女アーヤが魔女の養子になってからのやり取りをコミカルに描いています。3DCGという新しい手法への挑戦作として位置づけられています。
君たちはどう生きるか(2023年)
監督は宮崎駿さんです。10年ぶりの長編新作として公開され、アカデミー賞長編アニメーション賞を受賞しました。戦時中の少年眞人が不思議な塔の世界に迷い込む物語で、宮崎さんのこれまでの作品世界を集約したような濃密な内容になっています。
初めてジブリ作品に触れるなら、まずは「となりのトトロ」「魔女の宅急便」「千と千尋の神隠し」あたりの宮崎駿作品から入り、その温かさに慣れてきたら「火垂るの墓」や「おもひでぽろぽろ」といった高畑勲作品でリアリズムの深みに触れてみるのがおすすめです。そこから米林宏昌さんや宮崎吾朗さんの作品へと視野を広げていくと、ジブリという一つのスタジオの中にある作家性の違いが、より鮮明に見えてくるはずです。
この記事のまとめ
- ✓ 宮崎駿監督の最新作は10年ぶりの長編でアカデミー賞を受賞
- ✓ 初めてならトトロや魔女の宅急便など宮崎駿作品から入るのがおすすめ
- ✓ 慣れたら高畑勲や米林宏昌・宮崎吾朗の作品へ視野を広げると良い