映画『007 スペクター』の感想レビューを、ネタバレなし・ネタバレありの両方でまとめました。2015年12月4日に日本公開されたサム・メンデス監督のスパイアクションで、上映時間は148分、主題歌はサム・スミスの「Writing's on the Wall」です。この記事では前半をネタバレなしの感想、「⚠️ ここからネタバレを含みます」という警告以降を結末まで踏み込んだネタバレあり考察として構成しています。結論から言うと、5点満点中3点という評価です。まずは予告編を2本、ご覧ください。
1本目はメインの予告編、2本目はメキシコシティでの冒頭シーンを含むティザーです。本編を観る前の雰囲気づくりとして、両方チェックしてみてください。
本作はダニエル・クレイグ主演のジェームズ・ボンド映画としては『カジノ・ロワイヤル』『慰めの報酬』『スカイフォール』に続く4作目にあたり、フランツ・オーベルハウザー(クリストフ・ヴァルツ)率いる犯罪組織「スペクター」との対峙を描いています。
ここからは作品情報とキャストを整理し、そのあとにネタバレなし感想へ進みます。
作品情報

| 邦題 | 007 スペクター |
| 原題 | Spectre |
| 上映日 | 2015/12/4 |
| 作成国 | アメリカ・イギリス |
| ジャンル | アクション |
| 上映時間 | 148分 |
あらすじ
少年時代を過ごした「スカイフォール」で焼け残った写真を受け取ったボンド(ダニエル・クレイグ)。
その写真に隠された謎に迫るべく、M(レイフ・ファインズ)の制止を振り切り単独でメキシコ、ローマへと赴く。
そこでボンドは悪名高い犯罪者の美しい未亡人ルチア・スキアラ(モニカ・ベルッチ)と出逢い、悪の組織スペクターの存在をつきとめる。
その頃、ロンドンでは国家安全保障局の新しいトップ、マックス・デンビ(アンドリュー・スコット)がボンドの行動に疑問を抱き、Mが率いるMI6の存在意義を問い始めていた。
ボンドは秘かにマネーペニー(ナオミ・ハリス)やQ(ベン・ウィショー)の協力を得つつ、スペクター解明の鍵を握る旧敵、Mr.ホワイト(イェスパー・クリステンセン)の娘であるマデレーン・スワン(レア・セドゥ)を追う。
死闘を繰り広げながらもスペクターの核心部分へと迫るなか、物語の舞台は氷雪のアルプス、そして灼熱のモロッコへー。
ボンドは追い求めてきた敵と自分自身との恐るべき関係を知ることになる――!
filmarksより引用
キャスト
監督:サム・メンデス
サム・メンデスは前作『スカイフォール』に続いて2作連続でボンド映画を手がけた監督です。人間ドラマ出身らしい丁寧な人物描写に定評があり、本作でも組織の黒幕とボンドの因縁を、単なる悪役対決ではなく人間関係のドラマとして描こうとする姿勢が随所に感じられます。
脚本
- ジョン・ローガン
- ニール・パーヴィス
- ロバート・ウェイド
- ジェズ・バターワース
脚本には前作『スカイフォール』のジョン・ローガンに加え、シリーズ常連のニール・パーヴィスとロバート・ウェイド、そして本作から新たに参加したジェズ・バターワースが名を連ねています。
出演者
出演者情報は「俳優(役名)」の順番で記載しています。
ダニエル・クレイグ(ジェームズ・ボンド)
ダニエル・クレイグ さんが出演している他の映画
- ドラゴン・タトゥーの女
- ライラの冒険 黄金の羅針盤
- トゥームレイダー
レア・セドゥ(マデレーン・スワン)
レア・セドゥ さんが出演している他の映画
- グランド・ブダペスト・ホテル
- ミッドナイト・イン・パリ
- ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル
クリストフ・ヴァルツ(フランツ・オーベルハウザー/ブロフェルド)
犯罪組織スペクターの首領フランツ・オーベルハウザー、そして正体を明かして以降はブロフェルドを演じたのがクリストフ・ヴァルツです。抑揚を抑えた静かな話し方の中に不気味さを滲ませる持ち味があり、声を荒げなくても場の空気を支配してしまう独特の存在感を放っています。
レイフ・ファインズ(M)
前作『スカイフォール』から新たにMを引き継いだレイフ・ファインズは、本作では国家安全保障局によるMI6統廃合という組織内の圧力とも戦う上司として描かれます。ボンドを制止しながらも最後には裏で支える上官らしい振る舞いに、シリーズを通じたMという役職の重みを感じました。
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感想
ネタバレなし感想
ここからはネタバレなしの感想です。まず触れておきたいのが、冒頭のメキシコシティでのシーンです。骸骨の仮装をした群衆の中をカメラがボンドとともに歩き続け、建物の中、屋上、路地までを一続きに見せていく撮り方(カットを割らずに長回しで撮る手法)は、シリーズの中でも屈指の映像体験でした。派手な爆発が来る前に「間に合わなくなる緊張感」を映像だけで作ってしまう力があります。
Qを演じるベン・ウィショーの働きぶりも見逃せません。今回のQは現場に同行するほど頼れる存在で、パソコンに核マークのような警告シールを貼っている小道具の遊び心には思わず笑ってしまいました。あの発想は自分でも真似したくなるくらい気に入っています。
マデレーン・スワンを演じるレア・セドゥも、画面の中では終始凛とした佇まいで魅せてくれます。取材映像やインタビューで見せるリラックスした表情とはまるで違う、役に入り込んだ緊張感のある表情の作り方に、女優としての振れ幅を感じました。
一方で正直に言うと、王道のスパイ映画としての作りは良くも悪くも手堅く、目新しい仕掛けを期待していた自分にはやや物足りなく感じた部分もありました。歴代シリーズが好きで正統派の007らしさをそのまま味わいたい方には安心しておすすめできますが、近年のスパイアクションのようなひねった展開を求める方には、やや定番すぎると映るかもしれません。
評価
評価は5点満点中3点としました。理由の詳細はネタバレありパートで説明しますが、映像面の完成度と物語の詰め込み具合のバランスが、率直な評価を分ける決め手になっています。
⚠️ ここからネタバレを含みます。未鑑賞の方はご注意ください。
印象的だったシーン
ネタバレありで最も印象的だったのは、犯罪組織スペクターの正体が、ボンドの幼少期を知る義兄フランツ・オーベルハウザー、すなわちブロフェルドだったと判明する場面です。単なる新顔の黒幕ではなく、過去作を通じてボンドを陰から見てきた存在だったという構図によって、これまでの『カジノ・ロワイヤル』『慰めの報酬』『スカイフォール』の出来事までもがスペクターの掌の上だったという解釈が成立してしまう、大がかりな仕掛けになっています。
キャラクターについて
ブロフェルドは、世界規模の監視網を掌握しようとする野心と、ボンドに対する歪んだ執着を併せ持つ人物として描かれます。クリストフ・ヴァルツの抑えた演技のおかげで、絶叫するような悪役ではなく、静かに追い詰めてくる怖さが際立ちます。マデレーン・スワンは、旧敵Mr.ホワイトの娘という立場から、ボンドと同じく過去に囚われた人物として寄り添う相手になり、これまでのボンドガールとは少し違う対等な関係性が新鮮でした。
良かった点・気になった点
良かった点は、やはり冒頭メキシコシティの長回しに代表される映像の作り込みです。ここまでの水準の画は、シリーズ全体で見ても上位に入ると感じました。気になった点は、ブロフェルドを「シリーズ全作品の黒幕」として位置づけたことで、これまで積み上げてきた個々の悪役や事件の重みが薄れ、後付け設定として詰め込みすぎに映ってしまう点です。クレイグ版4作を締めくくる集大成として大きな因縁を用意したい意図は分かるのですが、その分、一本の映画としての物語の座りはやや窮屈になっていると感じました。
総評・一言まとめ
総評として、メキシコシティのオープニングをはじめ映像面は一級品でありながら、クレイグ版ボンドの集大成として全ての悪役をブロフェルドとスペクターに結び付けようとした脚本は、詰め込み気味で少し欲張りすぎたという印象です。映像を観るための一本としては満足度が高く、物語の因縁の見せ方には物足りなさが残る、というのが5点満点中3点とした率直な理由です。この因縁の決着は、続編の『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』のレビューで確認できるので、あわせて読んでみてください。
こちらは続編『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』の予告編です。
ダニエル・クレイグ版のシリーズを最初からおさらいしてから観ると、スペクターとの因縁がどう決着するのかがより深く味わえます。
まとめ
『007 スペクター』は、メキシコシティの長回しオープニングに代表される映像面の完成度と、ブロフェルドとの因縁を丁寧に描こうとする脚本の詰め込み感が同居する作品です。ネタバレなしパートだけでも見どころは十分に伝わるので、まずは予告編とあわせて雰囲気を確かめてみてください。鑑賞後は、ネタバレありパートで印象的だったシーンやキャラクターの捉え方を読み比べてみるのもおすすめです。