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人気漫画『ONE PIECE』の物語において、世界の頂点に君臨する「天竜人」の祖先である最初の20人(20人の王)。彼らが800年前に何をしたのか、その設定の裏側にどのような現実世界のモデルがあるのかは、ファンにとって非常に興味深いテーマです。
ただし、これらのモデル説は「作者がどれか一つだけを下敷きにした」と断定できるものではなく、複数の歴史的・宗教的モチーフ(元になった題材)が層になって重なっていると考えられます。この記事では原作の前提事実を整理したうえで5つのモデル候補を掘り下げ、最後に反対解釈にも目を配りたいと思います。
⚠ この記事は世界政府設立の背景やネフェルタリ家、虚の玉座に関わる既出の設定を扱うネタバレ考察です。未読の方はご注意ください。
今回の記事の内容
- 800年前に王たちが樹立した世界政府と最初の20人の原作事実整理
- 国連や古代ローマ、キリスト教美術など5つのモデル候補の考察
- ネフェルタリ家の特異性と各説への反対解釈・別の見方の検討
前提となる原作の事実整理
モデル考察に入る前に、原作で明示されている前提を整理しておきます。曖昧な記憶のまま議論を進めると土台がぶれるため、ここははっきりさせておきたいところです。今から800年前、複数の国の王たちが手を取り合って世界政府を樹立しました。この「最初の20人」の子孫が、現在マリージョアで暮らす天竜人です。20人の王のうち唯一マリージョアへの移住を拒み地上に残った家系がネフェルタリ家であり、彼らは「地の王」と呼ばれる立場にあります。
さらに、20人の王たちは自ら武器を置き、以後誰も王座に座らないことを誓ったとされる虚の玉座があり、現在その玉座にはイム様が座っています。表向きの最高権威は天竜人最高位の五老星ですが、その五老星でさえイム様にひざまずく姿が描かれ、実質的な最高権力者はイム様だと示唆されています。これらは原作内で示されている情報です。
なお、以降の国連や古代ローマなど現実の歴史・組織との対応関係は、現実の歴史知識と作中設定を重ね合わせて読む私自身の考察であり、尾田栄一郎先生ご本人が公式に明言しているものではありません。この前提を共有したうえで読み進めていただければと思います。
1. 国際連合(UN)と「五老星」の権力構造

世界政府の構造そのものが、現代の国際政治を風刺していると私は見ています。特に注目したいのは五老星です。
彼らの存在は、国連安全保障理事会の5つの常任理事国を彷彿とさせます。20人の王が連合して世界政府という組織を作った経緯も、複数の主権国家が集まって国際機関を形成した歴史的プロセス(国連や国際連盟の設立)と重ねて読むことができ、強力な国々が世界のルールを決定するという構図がこの設定に投影されているのかもしれません。
この説の前提と限界
ただし国際連合の設立は1945年、「最初の20人」の樹立は作中800年前とされ、年代は一致しません。年代の一致ではなく、「少数の大国が世界のルールを事実上決めている」という構造の相似形として読むのが妥当でしょう。
2. 古代ローマ帝国の「貴族制(パトリキ)」

聖地マリージョアに住む天竜人(世界貴族)のあり方は、古代ローマのパトリキ(貴族)がモデルの一つと言えるでしょう。建国に関わった家系が代々特権を享受し政治を独占した古代ローマと同様、「世界の創造主」の末裔として法を超越した天竜人の設定は徹底した階級社会を思わせます。「ドンキホーテ」「フィガーランド」といった名前の響きも欧州の貴族名を連想させます。
パトリキとプレブスの対比から見る天竜人
古代ローマの社会は、建国期からの名家であるパトリキ(貴族)とそれ以外の市民であるプレブス(平民)という明確な身分の壁で構成されていました。天竜人が法の外側に置かれ、一般人には手が届かない特権を持つ設定は、単なる「金持ち」ではなく建国者の末裔だからこそ許される身分制であるという点で、パトリキの発想に近いと私は考えています。
3. キリスト教美術「ヘトイマシア」と虚の玉座

「20人の王が武器を置き、誰も座らないことを誓った」とされる虚の玉座には、宗教的なモチーフが見て取れると私は考えています。その一つが、キリスト教美術におけるヘトイマシア(Hetoimasia)という概念で、目に見えない神や再臨する審判者のために空けておく「準備された玉座」を意味します。誰も座らないはずの玉座に「イム様」が座っているという作中の描写は、「独裁を許さない民主的な誓い」を偽装しながら実際には絶対的な支配者が隠れているという皮肉な構造を象徴していると読むことができます。
「空位の象徴」がなぜ皮肉になるのか
ヘトイマシアは本来「そこにいるはずの絶対者への敬意」を示す表現で、誰も座らないことこそが敬虔さの証でした。ところが作中では空であるべき場所に実際に支配者が座っているという逆転が起きており、この構造が世界政府の建前(平等な統治)と実態(見えない絶対権力者)のギャップを表していると考えられます。
4. 歴史上の「連合体」と騎士団の構造

歴史上、複数の有力家系が連合して国家や王朝を支えた例は少なくありません。中世ヨーロッパの十字軍の騎士団はその一例で、聖騎士や貴族が共通の目的のために集まり後に権力を持った歴史は、20人の王の成り立ちと重なって見えます。また日本の五摂家のように有力家系が交代で要職を務める構造もあり、尾田栄一郎先生がこうした東西の統治システムを意識した可能性も考えられますが、あくまで一つの読み方です。
他の4つと比べた場合の根拠の強さ
正直なところ、この「歴史上の連合体」というモデルは他の説と比べると作中の具体的な描写と一対一で結びつく証拠には乏しく、5つの中では最も状況証拠的な説です。ただし、有力な家系が連合し、後にその連合体自体が権力を独占していく歴史のパターンは、洋の東西を問わず繰り返し見られる普遍的な構造でもあります。
5. ネフェルタリ家の特異性とエジプト神話

20人の王の中で唯一マリージョアに移住しなかったネフェルタリ家は、明らかに古代エジプトがモデルと考えられます。アラバスタ王国の文化や装束、「ネフェルタリ」という名前自体が古代エジプトの王妃から取られています。
さらに原作では、800年前のネフェルタリ家の女王が「D」のミドルネームを持っていたことも明かされています。ネフェルタリ家だけが特別な立ち位置にあるという点は、単なる偶然ではなく作品の根幹に関わる伏線の一つだと私は見ています。また「20」という完成された数字から1つだけ欠ける構造は、世界の調和が最初から崩れていたことを示唆しており、キリスト教の「12使徒とユダ」のような数秘術的な物語構成の影響も感じさせます。
「地の王」という立場が持つ意味
ネフェルタリ家が唯一マリージョアに移住しなかった結果与えられた「地の王」という呼び名は、単なる特殊枠ではなく、20人の王たちの誓いを地上側で見届ける役割を負わされた家系だとも読めます。天竜人が隔絶した聖地で特権を享受する一方、ネフェルタリ家だけが地上の民と同じ目線に立ち続ける構図は、権力の内側と外側を同時に体現する特異な立場だと考えられます。
反対解釈として押さえておきたい視点
ここまで5つのモデル候補を見てきましたが、あくまで一つの読み方であり、他の解釈も成り立ちます。一つ目は、単一あるいは少数の元ネタを求めること自体が単純化しすぎているという見方です。複数のモチーフを断片的に取り込み「絶対的な特権階級」を作り上げるパーツとして組み合わせたと考える方が実態に近いのかもしれません。
二つ目は、ここまでのモデルはいずれも西洋的な文脈が中心ですが、ワノ国編以降の作風を踏まえると公家と武家のような東アジアの二重権力構造からの影響も無視できないという見方です。三つ目は、虚の玉座についてです。「誰も座らない玉座」を尊ぶ発想はヘトイマシアに限らず他の宗教にも見られる普遍的なイメージのため、唯一の元ネタと断定しないほうが慎重でしょう。いずれの反対解釈も5つのモデル説を否定するものではなく、「唯一の正解を急いで決めつけない」誠実さを保つための補助線だと私は捉えています。
まとめ

ワンピースに登場する「最初の20人」には、単一のモデルではなく以下の複数の要素が巧みに組み込まれていると考えています。
- 現代政治:国際連合の常任理事国システム
- 歴史:古代ローマの貴族制度や歴史的連合体
- 宗教・神話:ヘトイマシア(準備された玉座)や古代エジプト
かつての連合国家がいかにして絶対的な特権階級(天竜人)へと変貌したのか。国連や古代ローマ、キリスト教美術、古代エジプトという複数の視点を重ねることで、ワンピースの世界観の緻密さがより鮮明になります。ただし、これらのモデル説はどれも断定できるものではなく、複数の史実や宗教的イメージが重なり合った結果として今の設定が生まれていると考えられます。今後の展開でこの5つの視点がどう補強・修正されるのか、注目していきたいと思います。
この記事のまとめ
- ✓ 「最初の20人」は国連や古代ローマなど複数の元ネタを持つという考察
- ✓ 現代政治・歴史・宗教神話の要素が組み合わさっているとみる
- ✓ モデル説はどれも断定できない複合的な設定と位置づける
よくある質問
ワンピースの「最初の20人」のモデルは確定していますか?
いいえ、公式に明言された事実ではなく、本記事は国連や古代ローマなど複数のモデル候補を挙げる考察です。単一の元ネタに絞り込む見方には反対解釈もあります。
天竜人のモデルは古代ローマの貴族なのですか?
【考察】建国に関わった家系が特権を独占した古代ローマの貴族パトリキが、天竜人のあり方のモデルの一つと考えられるという読み方です。
なぜネフェルタリ家だけ特別な扱いなのですか?
【考察】20人の王の中で唯一マリージョアに移住しなかった一族で、古代エジプトがモデルとされ「地の王」という独自の役割を負ったと読めるためです。
※本記事は作品の批評・考察を目的とした個人の感想です。あらすじの詳細な再現や結末の解説は行っていません。引用は論評に必要な最小限にとどめています。作品名・登場人物名・画像等の権利はすべて各権利者に帰属します。