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『007/慰めの報酬』は、2008年に公開(日本公開は2009年1月24日)された、マーク・フォースター監督によるアクション映画です。上映時間は106分と歴代ボンド映画の中でも最も短い部類に入りますが、その分息をつく間もなく物語が畳みかけてきます。
この作品最大の特徴は、前作『カジノ・ロワイヤル』の直後から物語が始まる、シリーズ史上初めての直接続編であるという点です。愛した女性ヴェスパーを失ったボンドの喪失感と復讐心をそのまま引き継いだ構成になっているため、先に前作を観ておくかどうかで感情移入の深さがかなり変わります。前作が未見の方は、先に『カジノ・ロワイヤル』のレビューに目を通しておくと、この記事の感想もより実感を持って読んでいただけるはずです。この記事では、まず作品情報とネタバレなしの感想をお伝えし、その後「ここからネタバレ」という合図とともに考察へ踏み込みます。5点満点で3点とした評価の理由も、最後まで読めば分かるようにまとめました。
作品情報

| 邦題 | 007/慰めの報酬 |
| 原題 | Quantum of Solace |
| 上映日 | 2009/1/24 |
| 作成国 | イギリス・アメリカ |
| ジャンル | アクション |
| 上映時間 | 106分 |
あらすじ
傷ついた心が、共鳴する。
初めて愛した女・ヴェスパーを失ったジェームズ・ボンドは、ヴェスパーを操っていたミスター・ホワイトを尋問し、背後にいる組織の存在を知る。
早速捜査のためにハイチへと跳び、知り合った美女カミーユを通じて、組織の幹部であるグリーンに接近。
環境関連会社のCEOを務める男だが、裏ではボリビアの政府転覆と天然資源の支配を目論んでいるのだった。
ボンドは復讐心を胸に秘めながら、グリーンの計画阻止に動くが……。
filmarksより引用
キャスト
監督:
脚本:
原作:
監督を務めたのは、『ネバーランド』『主人公は僕だった』といったヒューマンドラマで高く評価されてきたマーク・フォースターです。本格的なアクション演出はこれが初挑戦でしたが、人物の感情を丁寧に追うドラマ出身らしい視点が、格闘シーンの生々しさや痛みの伝わり方に表れています。
クレイグ版ボンドの集大成にあたる『007 スペクター』もあわせてどうぞ。『007 スペクター』のレビュー記事
出演者
出演者情報は「俳優(役名)」の順番で記載しています。
ダニエル・クレイグ(ジェームズ・ボンド)
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ダニエル・クレイグさんが出演している他の映画
- ドラゴン・タトゥーの女
- ライラの冒険 黄金の羅針盤
- トゥームレイダー
オルガ・キュリレンコ(カミーユ)
オルガ・キュリレンコさんが出演している他の映画
マチュー・アマルリック(ドミニク・グリーン)
環境コンサルタント企業のCEOという表の顔を使い、水資源の独占を企む黒幕グリーンを演じたのがマチュー・アマルリックです。神経質そうな笑顔の裏に狂気を滲ませる演技が、歴代ボンド映画の悪役の中でも異質な不気味さを放っています。
ジェマ・アータートン(フィールズ)
英国情報部の現地担当官フィールズを演じたのがジェマ・アータートンです。ボンドを監視する立場から次第に事件へ巻き込まれていく役どころで、出演シーンは限られていますが、物語の緊張感を高める重要なポジションを担っています。
ジュディ・デンチ(M)
MI6のトップ「M」を演じるジュディ・デンチは、本作でもボンドの上司として登場します。今回は暴走気味の部下を抑えようとする管理者としての顔がより色濃く描かれ、ボンドとの緊張感あるやり取りが本編の見どころのひとつになっています。
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感想
ネタバレなしの感想 — 空気感とアクションの質感
本作を観て最初に感じたのは、前作以上に「感情が先に立つボンド」だということです。任務よりも復讐が先にあるような硬質な空気が全編を覆っていて、いつものダンディなユーモアは鳴りを潜めています。冒頭のカーチェイスから、カットを非常に短い間隔で割る編集(いわゆる高速カッティング)が採用されており、疾走感を出す代償として「何が起きているか一瞬分かりにくい」という声も多い作品です。私自身、初見のときはこの編集のスピード感に置いていかれそうになりました。
見どころとして挙げたいのが、劇中に登場するオペラ公演のシーンです。舞台上で朗々と歌われるオペラの音と、裏で進行する緊迫したやり取りを交互に見せる構成になっていて、優雅な音ときな臭い会話の落差が、そのまま作品全体のテーマを凝縮しているように感じました。ネタバレを避けるため詳細は伏せますが、音の使い方だけでここまで緊張感を作れるのかと驚いた場面です。こんな人におすすめしたいのは、正統派のスパイ映画よりも復讐劇としてのボンドを観たい方、逆におすすめしにくいのは前作のような会話劇やロマンスを期待している方です。
ここからネタバレを含みます。未鑑賞の方はご注意ください。
ネタバレありの感想・考察
ネタバレありで印象的だったのは、終盤の砂漠にあるエコホテルが炎に包まれていくクライマックスです。水資源を独占しようとするグリーンの野望が炎とともに崩れていく様は視覚的に分かりやすく、カメラも長回し寄りの撮り方に切り替わるため、序盤の慌ただしい編集とは対照的に状況が飲み込みやすくなっています。このメリハリが、単調になりがちな「追う・逃げる」の構造に効いていると感じました。
キャラクターの面では、カミーユというもう一人の「復讐者」を配置した脚本が興味深いところです。ボンドとカミーユは互いの目的のために利用し合う関係でありながら、根っこにある喪失の痛みが重なっていくため、恋愛関係に落とし込まずに終わらせた着地には好感を持ちました。一方で気になったのは、グリーンの計画そのものが「水利権」という地味な題材ゆえに、悪役としてのスケール感が前作のル・シッフルに比べて小粒に映ってしまう点です。私がこの映画をあらためて評価したいのは、ボンドというキャラクターを「任務のために動く男」から「感情のために動く男」へ一時的に読み替えた点です。シリーズとしては毎回内面がリセットされがちなボンドを、前作から壊れかけたまま持ち越して描くという構成は、後の『スカイフォール』以降に続く"人間くさいボンド"路線の実質的な出発点になっていると感じます。この一点だけでも、単なる前作の消化試合では終わっていない作品だと思いました。だからこそ、私はこの作品を5点満点中3点としました。アクション演出と編集の思い切りは評価しつつも、悪役のスケール感や物語の分かりやすさで前作に一歩譲る、というのが率直な評価です。
まとめ
本作の前提となる前作は『カジノ・ロワイヤル』評で振り返れます。
『007/慰めの報酬』は、単体で見ると駆け足気味の一本ですが、『カジノ・ロワイヤル』の続きとして観ると印象がまったく変わってくる作品です。まだ前作を観ていない方は、先に前作から通しで観ることを強くおすすめします。喪失を抱えたボンドが次にどんな顔を見せるのか、ぜひ実際に確かめてみてください。
シリーズ次作『007 スペクター』の感想もあわせてどうぞ。
この記事のまとめ
- ✓ 感情が先に立つボンド像を描き復讐劇として観ると魅力が増す作品
- ✓ オペラ公演シーンの音の使い方に緊張感を凝縮した演出が光る
- ✓ 評価は5点中3点、アクションと編集は評価しつつ悪役の小粒さが惜しい
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