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1977年に打ち上げられた探査機が、49年後の今も地球に電波を送り続けていると知って、驚いたことはないでしょうか。
「とっくに電池が切れて、宇宙の暗闇で止まっているはずでは」と思った人もいるかもしれません。
結論から言うと、ボイジャー1号の現在の距離は地球から約260億kmで、通信も細く続いています。
この記事の数値は、NASAとジェット推進研究所(JPL)が公開している一次情報をもとにしています。
理学部の物理学科で学んだ立場から、距離・通信・電力の「今」を日常の比喩と数字で読み解いていきます。
あいちゃんボイジャー1号って、もう太陽系の外に出たんですよね?それなのにまだ連絡がとれるって本当ですか?
えぞえ連絡はとれています。
ただ「太陽系の外に出た」という言い方には、実は少し誤解が混ざっているんです。
距離と電波の物理から順番に見ていきましょう。
今回の記事の内容
- ボイジャー1号の現在の距離と、2026年11月に迎える「1光日」の節目
- 片道約23時間かかる通信と、残り2つになった観測装置の状況
- 「太陽系を出た」の誤解と、映画が描く宇宙の距離感の線引き
ボイジャー1号は現在どこにいる?地球から約1光日の距離

ボイジャー1号は現在、地球から約260億km離れた星間空間を飛んでいます。
NASAのボイジャー現在位置ページによると、2026年11月18日(米太平洋時間)に地球からの距離が259億200万kmに達する見込みです。
これは光がちょうど24時間で進む距離で、「1光日」と呼ばれます。
人工物が地球から1光日の距離に到達するのは、これが初めてです。
1光日を中学数学で計算してみる
光の速さは秒速約30万kmで、1日は8万6,400秒です。
30万km×8万6,400秒=約259億kmとなり、NASAの数値とほぼ一致します。
地球と太陽の距離(約1億5,000万km)に直すと、およそ170倍の遠さです。
スピードは速いが、光と比べると亀の歩み
ボイジャー1号は、太陽に対して秒速約17kmで遠ざかっていると紹介されています。
東京から大阪までの約400kmなら、およそ24秒で通り過ぎてしまう速さです。
それでも光と比べると約1万7,000分の1にすぎず、49年かけてようやく光の1日分に届いたことになります。
■ ここがポイント
人類最速クラスの探査機でも、光が1日で進む距離に49年かかりました。宇宙の距離感をつかむうえで、この比率は覚えておく価値があります。
ボイジャー1号の通信は今どうなっている?片道23時間の電波

ボイジャー1号との通信は現在も続いていますが、命令が届くまでに片道約23時間かかります。
NASAは2026年4月の発表で、地上から送ったコマンドが探査機に届くまで23時間ほどかかると説明しています。
返事を受け取るまでの往復では、ほぼ丸2日を待つ計算です。
電波も光の仲間なので、光より速く情報を届ける手段はありません。
この速さの上限が生まれる理由は光速の壁の解説で詳しく扱っています。
電波は距離の2乗で弱くなる
電波の強さは、距離が2倍になると4分の1、10倍になると100分の1に弱まります。
懐中電灯の光が、壁から離れるほど広がって薄暗くなるのと同じ仕組みです。
地球と太陽の距離の約170倍離れているため、同じ電波でも170×170=約2万9,000分の1の強さしか届きません。
この極めて弱い信号を、NASAの深宇宙ネットワーク(直径数十mの巨大アンテナ群)が拾い上げています。
近年の通信トラブルと復旧
2023年11月には、搭載コンピュータのメモリの不具合で意味のあるデータが届かなくなりました。
チームは壊れた部分を避けてプログラムを配置し直し、2024年に科学データの送信を再開させています。
2025年5月には、2004年から使えないとされていた姿勢制御用の噴射装置を復活させたことも発表されました。
片道23時間の遅れがある相手を遠隔で修理するのは、物理を学んだ立場から見ても驚異的な仕事です。
ボイジャー1号の電力と観測装置の現在|稼働は2つだけ

2026年4月時点で、ボイジャー1号で動いている観測装置は10個中2つだけです。
理由は、電力が毎年少しずつ減り続けているからです。
電源はプルトニウムの熱で動く原子力電池
太陽から遠すぎて太陽電池が使えないため、ボイジャーはプルトニウムが崩壊するときの熱を電気に変えています。
NASAの2026年4月の発表では、出力は毎年約4ワットずつ減っているとされています。
小さなLED電球1個分ほどの電力が、毎年失われていくイメージです。
熱源のプルトニウム238は、量が半分になるまでに約88年かかります。
49年なら熱の出方はまだ7割ほど残る計算ですが、熱を電気に変える部品の劣化も重なり、余裕は年々減っています。
観測装置の稼働状況(2026年4月時点)
NASAの公表をもとに、ボイジャー1号の主な装置の状態を整理します。
| 装置 | 状態 | 停止・稼働の時期 |
|---|---|---|
| 磁力計 | 稼働中 | 星間空間の磁場を測定 |
| プラズマ波観測装置 | 稼働中 | 周囲のプラズマの揺れを測定 |
| 低エネルギー荷電粒子観測装置 | 停止 | 2026年4月17日に節電のため停止 |
| 宇宙線観測装置 | 停止 | 2025年2月25日に節電のため停止 |
| カメラ | 停止 | 1990年2月14日に節電のため停止 |
カメラの停止日は、地球を「青い点」として写した有名な写真の撮影日でもあります。
今後の見通しと残るリスク
NASAは複数の機器をまとめて低電力の代替品に切り替える節電策を、ボイジャー2号で2026年夏に成功させました。
同じ切り替えをボイジャー1号でも数か月以内に行う計画が示されていますが、結果は最新の発表で確認する必要があります。
電力が尽きれば観測も通信も止まるため、運用の残り時間は長くても数年単位と考えられています。
よくある誤解の訂正|ボイジャー1号は太陽系を出たのか

ボイジャー1号が出たのは「太陽圏」であって、太陽の重力が及ぶ太陽系全体ではありません。
ここは、ニュースの見出しで最も誤解されやすい点です。
太陽圏とは太陽風がつくる泡
太陽からは「太陽風」と呼ばれる粒子の流れが常に吹き出しています。
この風が星々の間のガスとぶつかって押し合う境目までの範囲が、太陽圏という巨大な泡です。
ボイジャー1号は2012年8月25日にこの境目を越え、人工物として初めて星間空間に入りました。
太陽の重力圏はまだずっと先まで続く
太陽系の外縁には、氷の小天体が球殻状に取り巻く「オールトの雲」があると考えられています。
NASAの見積もりでは、ボイジャー1号がその内側の縁に届くまで約300年、通り抜けるには約3万年かかります。
家の玄関を出ただけで、まだ町の外には出ていない状態だと考えると分かりやすいでしょう。
電力が尽きても止まらない
もう一つの誤解は「電池が切れたら探査機は止まる」というものです。
宇宙空間には空気抵抗も摩擦もほぼないため、動いている物体はそのままの速さで進み続けます。
氷の上で滑らせたパックが、摩擦がなければいつまでも滑り続けるのと同じ「慣性」の働きです。
通信が途絶えたあとも、ボイジャー1号は人類のメッセージを載せたまま何万年も宇宙を旅し続けます。
機体には、地球の音や画像を記録した「ゴールデンレコード」が取り付けられています。
映画が描く宇宙の距離と通信|どこまでが科学でどこからが創作か

宇宙を舞台にした映画を見るときは、「光の速さで何時間かかる距離か」を意識すると、科学と創作の境目が見えてきます。
ここでは作品の筋には触れず、舞台設定と物理の関係だけを見ていきます。
『アド・アストラ』の海王星と通信の遅れ
2019年の映画『アド・アストラ』は、海王星付近までの旅を物語の舞台にしています。
海王星は太陽から地球の約30倍の距離にあり、光でも片道4時間ほどかかります。
現実の探査機ボイジャー2号は、1977年の打ち上げから海王星に近づくまで12年かかりました。
有人の宇宙船でこの距離を数か月規模で移動するとしたら、それは現在の技術を大きく超えた創作の領域です。
一方で、遠く離れた相手とのやりとりに時間の隔たりが生じる点は、物理的にも避けられない現実の制約です。
移動の速さや通信の描き方の検証はアド・アストラの物理解説にまとめています。
『コンタクト』と宇宙から届く電波
1997年の映画『コンタクト』は、宇宙から届く電波の受信を物語の軸にした作品です。
原作小説を書いた天文学者カール・セーガンは、ボイジャーのゴールデンレコードの制作でも中心的な役割を担いました。
何光年も先から電波が届くなら、その信号は何年も前に送られたものになるという設定は、物理的に筋が通っています。
ボイジャー1号の信号が「約1日前のボイジャー」を伝えているのと、まったく同じ理屈です。
一方、作中で描かれる高度な技術の実現可能性は、まだ科学の外側にある想像の部分です。
その線引きはコンタクトの物理解説で検証しています。
なお、映画の解釈はあくまでエンタメとしての楽しみ方で、作品の科学的正確さを学術的に保証するものではありません。
まとめ

ボイジャー1号は現在、地球から約260億km離れた星間空間で、細い通信をつなぎながら飛び続けています。
2026年11月には、人工物として初めて地球から1光日の距離に達する見込みです。
一方で電力は毎年約4ワットずつ減り、動いている観測装置は2つまで絞られています。
距離・通信・電力の数値は時期によって変わるため、最新の状況はNASAの公式ページで確認してください。
この記事のまとめ
- ✓ ボイジャー1号は地球から約260億km先にあり、2026年11月に1光日の距離へ届く見込み
- ✓ 通信は片道約23時間で、電力は毎年約4ワットずつ減っている
- ✓ 2026年4月時点で稼働中の観測装置は磁力計とプラズマ波観測装置の2つ
- ✓ 出たのは太陽圏で、オールトの雲を抜けるには約3万年かかる
よくある質問
ボイジャー1号とは今も通信できるのですか?
2026年時点でも通信は続いています。ただし地球から約260億km離れているため、命令が届くまで片道約23時間かかり、返事を受け取るまでには往復でほぼ2日を要します。
ボイジャー1号はいつまで観測を続けられますか?
終了時期は決まっていません。電力が毎年約4ワットずつ減っているため、NASAは装置を順番に止めながら運用を延ばしています。残り時間は長くても数年単位と考えられ、最新の見通しはNASAの発表で確認するのが確実です。
電力が切れたらボイジャー1号はどうなりますか?
観測と通信は止まりますが、探査機そのものは止まりません。宇宙空間にはほとんど抵抗がないため、慣性によってほぼ同じ速さのまま星間空間を進み続けると考えられています。
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