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「前作を観ていないけど、LEVEL2から観ても大丈夫?」と、139分の再生ボタンの前で手が止まっていませんか。
結論から言うと、前作『孤狼の血』を先に観てから本作に進むのがおすすめです。
前作と本作の両方をレビューしてきた私の実感として、本作の面白さは日岡の変化をどこまで追えるかで大きく変わるからです。
この記事を読めば、本作が自分に合う映画かどうかと、観終わったあとに残る問いの読み解き方が分かります。
映画「孤狼の血 LEVEL2」は、柚月裕子(ゆづきゆうこ)さんの『孤狼の血』シリーズを原作とする、映画「孤狼の血」の続編です。
監督は前作から続投の白石和彌さん、上映時間は139分、公開日は2021年8月20日です。
前半はネタバレなしの感想、後半は「ここからネタバレ」の注意書き以降に鑑賞後の感想・考察を書いています。
LEVEL2の前に観ておきたい前作については、前作『孤狼の血』のレビューで詳しく書いています。
R15指定の映画なので、暴力描写が苦手な人は無理に観ないほうがいいです。
今回の記事の内容
- 前作『孤狼の血』との違いと、前作を先に観たほうがいい理由
- 鈴木亮平演じる上林成浩の芝居と白石和彌監督の演出の見どころ
- 鑑賞後の考察(正義の倒錯とニホンオオカミのモチーフ)と5点中4点の評価
作品情報

| 邦題 | 孤狼の血 LEVEL2 |
| 上映日 | 2021/8/20 |
| 作成国 | 日本 |
| ジャンル | ヤクザ・任侠 |
| 上映時間 | 139分 |
あらすじ
3年前に暴力組織の抗争に巻き込まれ殺害されたマル暴の刑事・大上の後を継ぎ、広島の裏社会を治める刑事・日岡(松坂桃李)。
しかし、刑務所から出所した“ある男”の登場によって、その危うい秩序が崩れていく…。
やくざの抗争、警察組織の闇、マスコミによるリーク、身内に迫る魔の手、そして圧倒的“悪魔”=上林(鈴木亮平)の存在によって、日岡は絶体絶命の窮地に追い込まれる…
公式ホームページより引用
この記事では、あらすじを公式の紹介文の範囲にとどめ、筋の詳しい説明はしません。
本作の軸は、秩序を保つ側だった日岡が、自分の手に負えない存在に追い詰められていく構図にあります。
キャスト
監督:白石和彌
前作に続いての監督で、広島の裏社会を湿り気のある画で撮る手つきは本作でも健在です。
脚本:池上純哉
原作:柚月裕子
出演者
出演者情報は「俳優(役名)」の順番で記載しています。
松坂桃李(日岡秀一)
前作では若手刑事だった日岡を、本作では裏社会を抑え込む側の刑事として演じています。
松坂桃李さんが出演している他の映画
- 孤狼の血
- 湯を沸かすほどの熱い愛
- HELLO WORLD
鈴木亮平(上林成浩)
本作の空気を決めている人物で、公式の紹介文でも圧倒的な悪魔として位置づけられています。
鈴木亮平さんが出演している他の映画
- 俺物語!!
- 海賊とよばれた男
- 海街diary
前作『孤狼の血』との違い
前作と本作のいちばんの違いは、恐怖を生む源が「筋の通った暴力」から「理屈の通じない暴力」に移ったことです。
| 比べる点 | 前作『孤狼の血』 | 本作『LEVEL2』 |
|---|---|---|
| 恐怖の源 | 大上章吾の、筋を通す暴力 | 上林成浩の、理屈の通じない暴力 |
| 日岡の立ち位置 | 大上の背中を見て戸惑う若手 | 後を継いで秩序を保つ側 |
| 緊張感の質 | 誰を信じてよいか分からない緊張 | 次に何が起きるか読めない緊張 |
| 鑑賞の前提 | 単体で観られる | 前作を観ていると深く刺さる |
前作で日岡が大上から何を受け取ったかを知っているほど、本作の日岡の選択に重みが出ます。
ネタバレなし感想
全体の雰囲気・テイスト
本作は、鈴木亮平さん演じる上林成浩という、本能そのもののような暴力が画面を支配する映画です。
前作『孤狼の血』が、役所広司さん演じる大上章吾の体を張った暴力で観客を惹きつけたのとは対照的です。
白石和彌監督は、上林が画面に入ってくる瞬間だけ空気を張り詰めさせる間合いの作り方が巧みです。
次に何をしでかすか分からないという不穏さが、139分のあいだ途切れません。
見どころ・おすすめポイント
見どころは、なんといっても鈴木亮平さんの芝居です。
理知的な役の印象が強い俳優が、行間を読ませない衝動的な人物を体現していて、振れ幅の大きさに驚かされます。
表情ひとつで次の行動を読ませない緊張感を保ち続けている点が、本作の芯になっています。
あわせて、松坂桃李さん演じる日岡秀一が、前作から時間を経てどう変わったのかも見どころです。
前作を観てから臨むと、その変化の落差がより際立って伝わります。
白石和彌監督の演出で注目したい3点
本作の怖さは、暴力そのものよりも、暴力の気配をどう配置するかという演出から生まれています。
- 間合い:上林が登場する直前に場面が静まり、観る側が先に身構えるように作られている
- 見せ方の切り替え:すべてを映すのではなく、映さない部分で想像させる場面が恐怖を強めている
- 街の質感:広島の夜の街や港が湿った空気で撮られ、人物の息苦しさと地続きになっている
特に間合いの演出は、上林という人物の得体の知れなさを、説明ではなく体感で伝えることに成功しています。
こんな人におすすめ/おすすめしない人
前作の緊張感が好きだった人には迷わずすすめられ、暴力描写が苦手な人には向かない一本です。
おすすめできるのは、次のような人です。
- 前作『孤狼の血』を観て、広島やくざ映画特有の緊張感が好きだった人
- 俳優の芝居の振れ幅を楽しみたい人
- 観終わったあとに、正義とは何かを考えさせられる映画が好きな人
反対に、おすすめしないのは次のような人です。
- R15指定の暴力描写を伴う場面が苦手な人
- 前作を観ずに、人物関係の説明が丁寧な映画を期待している人
- 痛快な勧善懲悪の物語を求めている人
私の映画評価軸で見ると
私が映画を評価するときの軸に当てはめると、本作は「もう一度観たいか」で特に高い点が付きます。
| 評価軸 | 評価 | 理由 |
|---|---|---|
| もう一度観たいか | 高い | 鈴木亮平さんの細かな表情の変化を確かめ直したくなる |
| 前作なしで楽しめるか | やや低い | 人物関係と日岡の動機が前作の上に組み立てられている |
| ご都合主義の許容度 | 気にならない | 上林の予測不能さが、展開の強引さを感じさせない |
| 暴力描写の強さ | 強め | R15指定で、苦手な人には負担が大きい |
評価
評価は5点満点中4点です。
大上というカリスマ不在の中で日岡がどう秩序を保つのかという難しい題材に、鈴木亮平さんの芝居という強力な武器で応えた続編だと感じました。
減点分の理由も含めた総評は、この後の鑑賞後パートで書きます。
⚠ 注意
ここから先はネタバレを含みます。未鑑賞の方はご注意ください。
ネタバレあり感想・考察
- ガミさんの意志を受け継ぐ日岡を、頑張れと応援したくなる。
- 正義の側に立つはずの組織の描かれ方が、どんな暴力よりも怖い。
- 演技派のキャストが揃っていて、久しぶりに良い邦画だと思えた。
瀬島さんの言葉が印象的
極道は自分が悪いと表明しているぶんまだいい、たちが悪いのは正義の顔をした側だ——瀬島の言葉はそういう趣旨でした。

いや~、まさにそうだなって思いました。
この趣旨は、本作全体の主題を一行で言い当てていると私は受け取りました。
悪の自覚がある者より、自覚すらない者のほうがたちが悪いという視点が、作品を最後まで貫いています。
前作よりガラの悪くなった松坂桃李さんが渋くてかっこいい
本作の日岡は、ガミさんの意志を継いだぶん、前作よりはっきりガラの悪い不良刑事になっていました。
真面目な若手だった面影を残しながら凄みをまとっていく変化を、松坂桃李さんは一本の線として演じ切っています。
幸太の行く末にずっとヒヤヒヤさせられた
幸太のパートは、先の不安を観客に抱かせ続ける演出がいちばん効いていた部分です。
何が起きるかではなく、起きるかもしれないという予感で引っ張る作りなので、私は彼が画面に出るたびに身構えていました。
鈴木亮平さんの狂犬っぷりも素晴らしかった
上林の人物像には、往年の広島やくざ映画の系譜を感じました。
どうやら上林組のモデルは、映画「仁義なき戦い」の大友勝利などのようです。
この手の映画は好んで観ないのですが、「仁義なき戦い」は一度観てみようと思いました。
最後のニホンオオカミを探すシーンは何を表現しているのか
【考察】私は、ニホンオオカミのモチーフ(元になった題材)が、日岡のようなダークヒーローのメタファーだと受け取りました。
絶滅したと思われているオオカミが日本のどこかにいるかもしれないように、いなくなったと思われている存在がどこかで治安を守っている、という読みです。
大上という名前の響きがオオカミに近いことも、偶然ではないように思えます。
山の中の祠が映る場面では、ジブリの『もののけ姫』が頭をよぎりました。
山犬の神と森の関係に、オオカミと大上、オオカミと日岡の関係を重ねて観ることもできそうです。
正解は示されませんが、観た人に問いを投げかけて終わる映画は好きです。
キャラクターについて
上林成浩の怖さは、大上章吾が持っていた任侠の論理が一切通じないところにあります。
動機はあっても行動原理は本能に近く、誰にどう危害が及ぶかを予測させません。
日岡は、大上という後ろ盾を失ったことで、正義のために警察の手続きそのものを踏み越える人物へ変わりました。
自ら手段を選ばなくなっていく日岡の変化こそ、このシリーズの一番の見どころだと感じます。
良かった点・気になった点
良かった点は、上林という一人の人物だけで広島全域の秩序を崩せるだけの説得力が、芝居で裏づけられていたことです。
気になった点は、近田幸太(村上虹郎)のエピソードなど複数の人物の運命が同時進行し、前作未見だと相関関係をつかむまでに時間がかかることです。
この1点が、私が満点にしなかった理由です。
総評・一言まとめ
本作は、恐怖の質を個人の暴力から制御不能な暴力へ移し替えたことで、単なる続編以上の緊張感を生んだ一本です。
正義と手段が倒錯していく日岡まで描き切ったことも含め、評価は5点満点中4点が妥当だと感じました。
まとめ
孤狼の血は、柚月裕子(ゆづきゆうこ)さんの小説では3部作のシリーズです。
小説では次の順番です。
- 孤狼の血
- 凶犬の眼
- 暴虎の牙
本作のLEVEL2は、3部作の1作目と2作目の間の時期を描いた物語のようです。
本作の幕引きも、2作目の『凶犬の眼』の時期へつながっていくように私には見えました。
シリーズの残りの小説が今後どう映像化されるかにも期待しています(最新情報は公式サイトで確認してください)。
この記事のまとめ
- ✓ 本作は前作『孤狼の血』の続編で、前作を先に観ると日岡の変化が際立つ
- ✓ 見どころは鈴木亮平さん演じる上林の、理屈の通じない暴力の芝居と白石監督の間合い
- ✓ 評価は5点満点中4点。R15の暴力描写が苦手な人には向かない
よくある質問
「孤狼の血 LEVEL2」はどんな映画?
前作から3年後、大上の後を継いだ刑事・日岡秀一が広島の裏社会の秩序を保とうとする続編です。鈴木亮平さん演じる上林成浩の存在がその秩序を揺さぶります。
評価は?
5点満点中4点です。上林成浩の狂気じみた芝居を高く評価しつつ、前作未見だと人物関係を追いにくい点とR15の暴力描写を踏まえた点数にしています。
ラストのニホンオオカミを探すシーンは何を意味する?
【考察】筆者は、絶滅したはずのニホンオオカミがどこかにいるように、日岡のようなダークヒーローも姿を変えて存在し続けるというメタファーだと考えています。
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※本記事は作品の批評・考察を目的とした個人の感想です。あらすじの詳細な再現や結末の解説は行っていません。引用は論評に必要な最小限にとどめています。作品名・登場人物名・画像等の権利はすべて各権利者に帰属します。