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話題のSF映画を見た帰り道、友人が「あの世界、物理学的にありえるの?」とつぶやいた。
ネット上の解説記事を読んでも、SFの設定と物理学の仮説の境界がはっきりしないままだった。
この記事を読めば、マルチバースの実在可能性がどの理論に基づき、どこまで検証できるのかが整理できます。
具体的には、インフレーション理論・量子力学の多世界解釈・超弦理論のランドスケープという3つの仮説を区別して見ていきます。
理学部物理学科で量子力学と宇宙論を学んだ立場から、学術的に認められている範囲とまだ仮説段階の範囲を分けて解説します。
あいちゃんマルチバースって聞くと、SFだけの話に聞こえるんですけど、本当に物理学の理論なんですか?
えぞえ実は仮説にも種類があって、科学的にどこまで検証できるかも理論によって違うんです。この記事で整理していきますね。
今回の記事の内容
- マルチバース仮説には複数の種類があり、それぞれ根拠が異なること
- 科学的に検証可能な部分とまだ仮説にとどまる部分の違い
- SF作品の「パラレルワールド」と物理学の仮説の見分け方
映画・アニメで語られる「マルチバース」が話題になる理由

マルチバースという言葉は、もともと宇宙論の学術用語です。
この言葉が広く知られるようになったのは、近年のヒーロー映画やアニメ作品が「平行世界」や「もしも」の展開を描く設定として採用したためです。
たとえば、ある人気アニメ作品では、主人公が選ばなかった未来の可能性を示す舞台装置として、別の世界線が描かれています。
ただし、作品が描く世界観と、物理学者が議論する仮説は、同じ言葉を使っていても前提がまったく異なります。
物理学が語る「多元宇宙」には複数の種類がある

物理学の世界で「マルチバース」と呼ばれる仮説は、実は一つではありません。
宇宙論・量子力学・素粒子物理学という異なる分野が、それぞれ別の理屈で「複数の宇宙」を導き出しているためです。
代表的なものを整理すると、次の3つに分けられます。
インフレーション理論が示す「尽きない宇宙の泡」
宇宙は誕生から10のマイナス32秒後という一瞬の間に、急激に膨張したと考えられています。
この急膨張を指す理論が「インフレーション理論」です。
一部の研究者は、この膨張が場所によって止まったり止まらなかったりすると考え、「永久インフレーション」という仮説を提案しています。
たとえるなら、お風呂の泡がひとつ消えても、別の場所で次々に泡が生まれ続けるような状態です。
泡のひとつひとつが、私たちの宇宙とは別の物理法則を持つ可能性がある、という仮説です。
量子力学の多世界解釈という仮説
量子力学の数式は、観測するまで複数の可能性が同時に存在することを示しています。
この状態を説明する解釈のひとつが「多世界解釈」です。
コインを投げたとき、表と裏という2つの結果が、それぞれ別の世界に分かれて実現する、という考え方です。
多世界解釈はSF的な想像ではなく、量子力学の方程式そのものから導かれる解釈のひとつとして議論されています。
マルチバースと多世界解釈の関係は、多世界解釈の物理学解説でも詳しく扱っています。
観測によって結果が一つに定まるように見える問題は、シュレーディンガーの猫の思考実験でも議論されています。
超弦理論のランドスケープが示す無数の物理法則
素粒子物理学の有力な理論のひとつに「超弦理論」があります。
この理論を数式のうえで解くと、答えの組み合わせが天文学的な数になることが分かっています。
研究者の間では、その数はおよそ10の500乗ともいわれています。
この無数の組み合わせを「ランドスケープ」と呼び、組み合わせごとに異なる物理法則を持つ宇宙が存在しうる、という仮説です。
たとえるなら、ルールの違う無数のゲームが同時に用意されているようなイメージです。
マルチバースは科学的にどこまで検証できるのか

科学の理論として認められるには、観測や実験で確認したり反証したりできることが条件になります。
インフレーション理論は、宇宙全体に残る温度のわずかなゆらぎのパターンという観測データと一部整合しており、検証の手がかりがあります。
一方で、量子力学の多世界解釈や超弦理論のランドスケープは、別の宇宙を直接観測する手段が今のところ存在しません。
そのため、現状では検証不可能な仮説にとどまると考えられています。
理論上は存在しうるが観測が難しいという点では、ワームホールの実在可能性を巡る議論と似た構造があります。
「マルチバースは証明された、またはされていない」とひとまとめに語るのは不正確で、仮説ごとに検証の進み方を分けて考える必要があります。
よくある誤解…SF作品の「パラレルワールド」と物理学の仮説の違い

「マルチバース」と聞くと、SF作品の「もしも別の選択をしていたら」というパラレルワールド設定と同じものだと思われがちです。
しかし、物理学の仮説は、作品のように自由に設定できるものではありません。
インフレーション理論や超弦理論の仮説は、数式を解いた結果として導かれるもので、物語の都合で枝分かれを増やすことはできません。
作品の「もしもの世界」は人間のドラマを描くための舞台装置であり、物理学の仮説は観測データや数式との整合性を問われる科学的主張です。
この違いを知っておくと、ニュースで「マルチバース」という言葉を見かけたときに、どの立場の話なのかを見分けやすくなります。
まとめ

マルチバースという言葉は一つではなく、インフレーション理論・量子力学の多世界解釈・超弦理論のランドスケープという異なる仮説を指しています。
このうちインフレーション理論の一部は観測データとの整合性があり検証の手がかりがありますが、残りは現状では検証不可能な仮説にとどまります。
SF作品のパラレルワールド設定と物理学の仮説は、同じ言葉を使っていても前提が異なるものとして見分ける必要があります。
この記事のまとめ
- ✓ マルチバース仮説は1種類ではなく、分野ごとに異なる理屈がある
- ✓ 検証可能性は仮説によって異なり、「証明された」と一括りにはできない
- ✓ SF作品の設定と物理学の仮説は前提が異なる
よくある質問
マルチバースは科学的に証明されているのですか?
いいえ、仮説によって状況が異なります。インフレーション理論の一部は観測データと整合する部分がありますが、量子力学の多世界解釈や超弦理論のランドスケープは、今のところ直接検証する手段がなく、仮説の段階にとどまっています。
マルチバースとパラレルワールドは同じ意味ですか?
日常的には同じ意味で使われがちですが、厳密には異なります。パラレルワールドはSF作品で自由に設定される舞台装置であるのに対し、マルチバースは物理学の数式や観測データから導かれる仮説を指す言葉です。
マルチバース仮説にはどんな種類がありますか?
代表的なものとして、宇宙の急膨張から導かれるインフレーション理論、量子力学の多世界解釈、超弦理論のランドスケープという3つが挙げられます。それぞれ異なる分野の理論から導かれており、検証可能性も異なります。
※本記事は作品の批評・考察を目的とした個人の感想です。あらすじの詳細な再現や結末の解説は行っていません。引用は論評に必要な最小限にとどめています。作品名・登場人物名・画像等の権利はすべて各権利者に帰属します。
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